平成12年2月吉日上程

いい炭の見分けかた


一番簡単な見分け方は音です。
炭の入った箱を振ったり、また炭を手でかき回したりしてみましょう。
質の悪い物ほどガサガサ、カサカサ等軽い音がします。
質の良い物になってくるとだんだん「カチャカチャ」「カチンカチン」「チンチン」等と音が高く澄んできまして、金属のような音になってきます。良いものであれば楽器になったりします。

さて、ここでは「いい炭」(この場合家の中でも使える伝統的な日本の炭)という物を「燃焼」と言う点から説明します。

物が燃えるってどういう事?

炭にはどんな種類があるの?


「物が燃える」という事。

私たちは普段何気なく「燃える」と言っていますが、「燃える」という現象は2通りに大きく分けられます。
気体が燃える
炎を出して燃えるいわゆる「燃える」と言うのはすべてこれです。
ガスなどはもちろんはじめから気体ですし、ろうそくなどが燃えるのもロウが蒸発してその気体が燃えているのです。
さて、ろうそくを消すと白い煙が出ますよね?これはいったん気体になったロウが冷えてまた固体(この場合微粒子)になった物が見えているのです。
この煙はいわゆる「煙」、つまり燃えない成分が燃えずに漂っている物とは違い、「燃える煙」です。
これ以後は煙になっていなくても(目にみえなくても)煙になる場合が多いという事でこの「いったん気体になって燃える成分」のことを「燃える煙」と言います。
この「燃える煙」が安物の炭を使ったときにでる嫌な咳き込んでしまう匂いや煙の正体なのです。
液体燃料は必ず気体になってから燃えるので、これを熱すると炎が出る前に「燃える煙」がでます。
固体が燃える
先の「気体が燃える」と違ってめったに見る事はありませんが、固体が直接燃える事もあります。
これの代表格が純粋な炭素、すなわち「炭」です。
これは固まりが真っ赤になって熱を出すだけで炎は出ません。
以上の事を踏まえて「木が燃える」という事を考えてみましょう。
木は燃焼という観点から見ると大きく分けて3つの成分からなっています。
それは
・木ガス
・木タール
・木炭
です。
木を蒸し焼きにすると(たとえばアルミホイルで割り箸を煙突部分を残して完全に包んでガスこんろであぶる)、煙突から目には見えませんが強い匂いのする、吸い込むとせき込むガスが出てきます。
これが「木ガス」です。この時煙突に火を近づけると炎を出して燃えます。
木ガスが出なくなるまで十分に蒸し焼きにしてのちに残るのが液体の「木タール」と固体の「木炭」(すなわち「炭」)です。
これも両方とも燃えますが、「木タール」を熱するとまずいがらっぽい煙が出てきます。この煙が「燃える煙」です。もっと熱すると炎を出して燃えまが、ここまで熱する事はなかなかできません。
最後の木炭を熱すると真っ赤になって燃えます。「固体が燃える」状態なので煙も出ず、不快な匂いもしません。また、温度がいわゆる炎に比べると低く、よってその熱量のほとんどが「遠赤外線」となって放出されます。この「遠赤外線」が食べ物の中深くまで染み込むので、直火で魚などを焼いたときになりがちな「表面は真っ黒に焦げてるけど中は生」といった状態になることなく芯から焼き上げてくれるのです。
また、「木ガス」や「木タール」、普通の都市ガスや灯油まで炭や石炭以外の物はすべてその成分として「水素」を含んでいます。この水素が燃えると「水」になるので、都市ガス等で焼いた物はどうしてもベチャベチャになりがちです。ウナギなどは特にそうなるので、ちょっと気の効いたウナギ屋さんなら必ず炭でウナギを焼いています。


炭にはどんな種類があるのか

一口に炭といっても一般に「炭」と銘打ってうられている物は大きく分けて3つに分けられます。
・「チャ○ール」とも売られている卵パックの様な形に整形されているもの。
これは粉状の炭を固めた物の周りを着火材(ある種のロウ)で固めた紙で覆った物で、アメリカから入ってきた物です。
これは大変に火付きがよくその点使いやすいですが、その反面着火材が曲者で煙(燃える煙)を大量に出します。
そのために七輪などで使う事は全く無謀で、これを室内で使うなんて考えられません。
これは河原などでドラム缶を半分に切ったような豪快な(具体的には焼く物と炭との距離が遠い)状態で使う物で、そんな場合にしてもちょっと煙がすごすぎて日本の混んだキャンプ場で使うのは気が引けます。また、食材にも煙ですごい匂いが着くのは避けられません。
こんなものを使って「炭ってだめだ」と思う方がいたら大変残念です。
・ディスカウントストアなどで売っている3キロ500円などの「安物」の炭。
よくピンクの着火材入りなどで売っている物です。
素人目には一見まともな炭にみえますが、実は木ガスや木タールなどが残っていて(要するに生焼け) 、火を付けると炎と煙を出します。
先にもかいたように本来木炭は炎も煙も出さずに燃える物で、いわばバッタモンです。
このあたりの品なら安いのでキャンプなどで大量に必要な場合などは良いでしょう。しかし、室内では使えません。
しばらく立って(30分ー1時間)煙が出なくなってからならもちなども焼けます。
それでもやはり匂いが強いのであまりお勧めはできません。
また、火力も下の本物の炭には劣ります。
ちなみに、これらの多くはただ焼き締めが甘いだけでなくラワンなど南方系の成長の速い木で作られているようで、そのためによけいに密度が低く「ガサガサ」せいぜい「カチャカチャ」と言った音しかしません。
・「本物の炭」
マンガなどに出てくる「炭火」に使われるのがこの炭です。
非常に火は付きにくいですが、いったん付けば非常に長持ちし、また煙も炎も出さないので七輪や火鉢などに屋内でも使えます。
こういう炭があれば秋には松茸やサンマ、冬には餅(あるいは風情ある暖房としても)、夏は焼き肉などに使えます。
一度このレベルの炭を使ってもらえれば炭の良さも分かってもらえるのではないでしょうか。
上の2種類は煙も匂いも強すぎて、「何でこんな煙たい目をしてすごい匂いの付いた物食わなあかんのか」と言う風に思うでしょうが、
これを使えば「風流」という日本人最大の贅沢が楽しめます。
もちろんこれもピンからキリまでたくさんのグレードがあります。
安い物は樫やブナなどで作られています。「カランカラン」「カキンカキン」と言った音がします。
高い物は水に沈むほど密度の高いウバメガシから作られ、非常に堅て重いため、金属音がします。なかには白炭と呼ばれ普通の炭と違い色が白い物もありますが、これはもうべらぼーに高価です。
こうなってくるとまさしく金属のような「キンキン」「チンチン」と言った音になってきます。

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